
――まず、瀬戸先生にお聞きしたいのですが、太宰府病院はどのような病院でしょうか?
本当に何でも診ているなという感じの病院で、精神疾患の領域では、ほぼすべての患者さんをまんべんなく診ている印象です。
この病院の役割としては、主に政策医療、つまり民間病院では難しい医療を担っていると思いますが、それにとどまらず、かなり幅広く対応しているところもあり、「とにかく何でも診ているな」という感じがします。
――太宰府病院では、多くの患者さんが通院や入院加療を受けられていますが、臨床だけでなく、多くの臨床研究も並行して行っている医療機関です。
その中でも瀬戸先生は、毎年、積極的に多くの論文を発表されていて、当院では研究の第一人者という存在です。先生の研究の中で、一番のトピックがあれば教えてください。
私は主に「措置入院研究」というのを一番長く取り組んでおり、2001年から約25年間、措置入院の研究班に所属して、全国の調査を定期的に行っています。協力してくれる病院に依頼をし、後ろ向きコホート研究や前向きコホート研究なども行ってきました。
本当に多くの病院の先生方、さらには都道府県庁の皆さまにもご協力いただき、データの収集と解析を進めています。
――措置入院は(この25年で)変わってきたのでしょうか?
そうですね。2000年当時は通報件数自体が少なかったのですが、検察官通報は年間1,000件ほどだったのが、現在では約3,000件になっています。警察官通報も5,000件程度から、今ではおよそ25,000件にまで増加しています。
件数としては極端に増えていると思います。
その分、診察不要などになって、重症な患者さんがそれほど増えたというわけではないと思います。
近年では若年層や女性が増えてきているようです。
ちなみに、日本全体の平均年齢がこの25年間で7〜8歳ほど上昇していますが、患者さんの平均年齢は3〜4歳程度しか上がっていないので、相対的にはやはり若い方が増えていて、敷居が下がったといると言えるのではないかと思います。
――これからの精神科医療は、多くの研究を経て、どのように進んでいくのが理想だとお考えですか?
やはり、根拠に基づく医療が非常に重要で、臨床研究というのは根拠を明らかにしていくことが必要です。
ただし、統計データというのは、あくまでも集団としての平均を捉えるような、平均的な患者さんに対して得られるデータのため、そのようなデータだけを見ていると、そこから外れてしまう重要な問題点を見逃すことにもなってしまいます。その両方に留意しながら進めていかなければならないと思います。
――先生は若手の医師やコメディカルスタッフの教育など、ご指導も非常に熱心に取り組まれており、そういう根拠やエビデンスに基づいたご教授はとても勉強になります。
恐れ入ります。
――これからもよろしくお願いします